「搬运」青桃 わたしの神様
著 イカ ニコミ
侵删
未完,后续及翻译后补
这段讲的校园欺凌,小青峰英雄救美的事。
顺便有没有愿意嵌字的同好,手上有几十本同人本,可提供扫图加龟速渣翻,合作出个翻译
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勉强算个迟到生贺……龟速更新日常……
这故事真的怪长的_(:з」∠)第一章才到一半
虽然很想传图然而我的破网不允许我传图……先这样吧
中间绿间的戏份也太多了, 打着打着快以为这是个绿桃文了,虽然其实只是两只没朋友的病友交流会,tcl
以及绿间这句「地球外生命体」吐槽的真犀利2333
1.きみは神様
子供の頃、私には神様がいた。
「うわ、桃井が来たぜ」
「ぎゃははは」
品の無い声で笑う男子の声を無視し、私は下駄箱で上履きをゆっくりと脱いだ。上履き持つては白く、そして丸い。
「肉まんみてー」
楽しそうに笑う声が響き、私は小さくため息をつく。その言葉はある意味正しい。
小学校一年生の終わりまで、私はぽっちゃりとした体形で、それによりからかわれることが少なくはなかった。
(うるさいなぁ)
声に出さず、そんなことを思いながら、私は赤いランドセルの肩にかかるベルトをきゅっと握りしめる。
彼らの気分でこうしてからかわれることも、どつかれることもあったが、大抵私はずっと本を読んでいた。彼らの行動は、いじめというほど本格的な嫌がらせでもなく、笑いと共にからかう程度で、ごく普通に話をする時もある。
彼らの気が向いた時に遊ばれるような、ちょっとした形の決まったやり取りのように、私の体形に関する揶揄は存在していた。
正直面倒くさくて嫌ではあったが、いつもこれは長続きしない。彼らの興味はすぐにそうれる。
(大ちゃんみたい)
男子はみんな単純だと私は幼馴染の姿を思い浮かべた。
私には隣の家に住む、幼馴染が一人いる。
小学生にあがるまでずっと一緒に過ごしていたが、一年生のクラス別けで初めて違う空間で過ごすことになった私と大ちゃんーーこと、青峰大輝は、当然だが昔よりも一緒に過ごす時間は圧倒的に短くなった。それでも近い存在であることは変わらない。
一代で商店街にあった街のスポーツ店を全国展開させただけではなく、関連するビジネスにも手を広げグループ企業にまで成長させた両親は多忙の極め、由緒正しい呉服屋さんを営む青峰家の方が、生活スタイルは落ち着いていた。そのため、私の母親は二人いるようなもので、週の半分以上は青峰家で晩御飯をご馳走になっている。
幼稚園までは、まさしく一日中大ちゃんと遊んでいたが、最近の大ちゃんは小学校で出来た新し友人達と、真っ黒になるまで走り回っている。私はたまに残って、本を読みつつ彼のそんな姿を眺めていた。
『あいつ、すっげぇ足はえぇんだぜ』
『すっげぇ?』
『おう。すっげぇから!』
朝、楽しそうに大ちゃんの口から語られる彼らが実際どんな風なのか、実際に目にすることの出来るその時間は非常に貴重なものでもあった。
今も少し離れた場所で、大ちゃん達の一団が駆けっこ鬼と水鉄砲を合わせて、デタラメな遊びを繰り広げている。
『大輝を頼むわね』
カラスが別れても、朝は一緒に登校している。そのたびに彼の母親が優しくそう口にして、私の頭を撫でてくれる。私はいつも頷くことしができないが、私はその役目を全うするべく幼稚園の頃と同じように、私はただ彼の様子をじっと見る。そのせいか、大ちゃん自身が気つかない不調を、いち早く気づくのはいつも私だった。
視界の中で、大ちゃんと一人の人物が走り合う。
(あ、本当に速いや。11秒、切っているのかな)
ピンクのラインがいった運動靴も、とてもいいなと思う。彼の足に合っていて、衝撃が上手く逃げている。大ちゃんとは全く違うデザインだ。
大ちゃんも運動靴が好きで、うちの店の在庫置き場を過去見た時は、面白い程目をきらきらさせ、興奮のあまり口をポカンと開けて全ての行動を停止していた。
ただ、幾ら頼まれているとは言え、少し見て飽きて日もあれば、飽きない日もある。どちらにしろ、帰りは一緒になることはなく、私は一人で歩いて帰った。そのため、この一時期大ちゃんと私は人前で話すことはあまりなく、周囲から幼馴染という認識が最も薄かった時期だと今は思う。
本来はそれくらい、私たちは違う人間だった。
大人しい私と走り回る大ちゃん。体を動かす遊びが大好きな大ちゃんと、動かないが全く苦ではない私。
大ちゃんのお気に入りの場所は、大抵人が居る場所で、私のお気に入りの場所は人が居ない静かな場所。この学校でもそれは同じだ。
一つは古い、校舎の一番端にある図書館の隅っこのテーブル。一度だけ大ちゃんも足を踏み入れたことがあるようだが、お化けが出そうだよなと全く関係のないことを口にしていた。
二つ目は、グラウンドがよく見える木陰。校舎と裏門の側に小さな庭のような、緑が密集している場所がある。委員会で育てている花壇もあるそこには、数本の木が生えていて、その木陰で私はたまに本を読む。大ちゃん曰く、夏にはセミが止まりそうだというしっかりとした木で、花壇の水やりを手伝いつつ、のんびりとそうこで本を読むことは楽しみの一つだった。
お気に入りの場所を見つけることは、寝やすい位置を見つけたような、安心させる効果がある。そんな風に私も少しずつ、他人と歯車を合わせることが苦手なまま、それでも私は私なりに小学校の生活に慣れ始めていた。
そんな中、少しだけいつもと違ったことが起きたのが入学して二ヶ月たった梅雨のある日ーーいわゆる今日のことだ。
いつも通りの私を揶揄する声。
雨がざぁざぁと音を立てている。その音をかき消すような男子達の声を聞き流しながら、私が昇降口を出た瞬間、私の背中が誰かに押された。
「つ」
勢いは殺せず私は思い切り膝をついた。当然場所は水溜りで、スカートは汚れて、傘は飛んでいってしまう。
髪の色と同じピンク色の傘。
(あ)
事態が飲み込めず呆然としていれば、傘は風を受けてころころと、どんどん遠くへ転がっていってしまう。
「あーあ」
「くくく」
立ち上がろうとしたらもう一度背中を誰かに押された。無邪気に、誰か笑う。新しい遊びに、誰かが笑い、私はもう一度地面に手を突いてしまう。
ざわざわとした声が周囲で聞こえるが、それがそんなのかは分からなかった。
お母さんが買ってくれた傘が遠くにいってしまうと私はもう一度立ち上がろうとすれば、先ほどより強く背中をおされ、今度は上半身も地面にぶつけてしまった。ランドセルがガタガタと揺れて私は咄嗟に、鞄をおろさなくてはと思った。
鞄の中には図書館から借りた読みかけの本が入っている。このままでは汚されてしまうかもしれない。
そんなことを思っていたときだ。
「さつき!」
ざわざわとした中でよく通る声が耳に響く。空気にを、世界を割るようにその声だけが私の耳にはっきりと聞こえた。
いつにない強いに不思議に思って振り返れば、まるでカブトムシでも見つけたときのような勢いで大ちゃんは私のところまでたどり着かなかった。
「お前ら、ふざけんなよ!」
問答無用で大ちゃんは、とあう一団に突然殴りかかったからだ。
いつも乱暴に扱われている黒いランドセルを振り回し、そのままを玄関口に捨てる。誰かの悲鳴が聞こえた。私はただじっと大ちゃんの動きを見つめている。
「うわ!青峰なんだよ」
「ふざけんな!ぶっ殺す」
「いってえっ」
「な、なんでお前が」
誰かの悲鳴、泣き声。
「ぜってえ、ーー殺す」
結局担任がこの場にたどり着くまで、私はじっとその様子を座って見ていた。
教師は一目で何かを理解したのか、私の傘を拾ってくれ、そして気づけば集団は無くなり、私は保健室に連れて行かれていた。
タオルをかりて汚れを取り、膝には薬をつけてもらう。暖かいお茶を渡されて、私はランドセルを抱えたままそれを飲んだ。
「さつき」
どれくらい時間がたったのか分からないが、ぶすくれた顔をした大ちゃんが担任と一緒にやってくる。
ふてくされた顔に、怒られたのだろうかとその様子を見ていれば、手を差し出された。
「帰るぞ」
こくんと私は頷いて、カップを保険医に返した。人気のない廊下はとても静かで、私達が歩く音だけが妙に響く。
ぺたぺたぺた。ぱた、ぺた。
面白くて私は、一度ジャンプをする。ガタガタとランドセルが不思議な音を立てる。
「さつき」
半歩前を歩いていた大ちゃんが名前を呼ぶ。
「うん」
「お前、次やられたら黙ってんじゃねーぞ」
繋いだ手は暖かい。
私は何故大ちゃんがそんなことを言うのか、いまいちよく分からなかった。
「絶対だ」
もう一度、強い口調で大ちゃんが念を押すように言う。
暖かい手と対照的に、その声は鋭く固い。
返事をしない私を振り返った大ちゃんの表情は、初めて見るものだった。
あんなことをされたのは初めてで、いつもはされてないよ、と口にしたかったが大ちゃんの表情に私は言葉を発せなく、代わりにただ小さく頷いた。
「…うん」
頷くと、手の暖かい感触が体中に広がり、唐突に私の視界には薄い膜が広がった。きらきらとして、とても綺麗な世界が映る。
(あ)
私には、やはり辛いことも悲しこともないと思う。全てはこの手が解決をしてしまう。
私には、昔から私の出来ないことをいつも简单にこなしてしまう神様がいる。
その神様は、誰よりも力強く早くグラウンドを走り、楽しそうに笑って輝いている。
手のひらをそっと握り返すと視線があったので、小さく笑うと大ちゃんもようやく少し表情を柔らかくるす。
私は、私の神様がとても大切で、そして大好きだった。神様が笑って、走り回る世界が愛してくならない。
大ちゃんの表情が柔らかくなったので、私は安心して心の底から笑った。世界が、きらきらと輝き、膜が弾ける。
その神様、運命ーーバスケットボールと出会うのはこれから約一年後のことだった。
その日、マジバは少し異様な光景が繰り広げられていた。
窓側の席に座っている、思わず振り返るくらいの美少女。だが文字通り振り向けば、その女性はじめっとした暗雲を背負い、机にばかり視線を向けている。雰囲気だけで言えばキノコが生えそうな勢いで、見てしまったことを何故が謝罪したくなるレベルだ。
「…、どうしよう」
アンニュイを通り越している美少女、こと桃井は文字通り頭を抱えていた。
そして異様さに拍車をかけている相手が、その美少女の向かいに座っている男だ。
目の前の美少女に表情を一ミリも変えるっことなく、異様な程綺麗な姿勢で、むしろふんぞり返るように座っている。目をひく程長身のその人物は、表情通りの静かな声を口にした。
「だから、」
感情を感じさせない声で、男は淡々と口にする。
「一体何なのだよ」
「うー…、どうしようと思って」
「だからそれが、何なのだよ」
若干の苛立ちも入ったその声は、分類されるのであれば間違いなく「冷たい」に入るものだ。
普通の女子であれば、その声を195cmの男ーーかつ欠片も表情らしものも見えない眼光に竦んでしまう所だが、桃井にとって彼は友人だった。彼のその視線程度でビビっているようでは、とてもではないが曲者ぞろい帝光中でマネージャーを務めてなどいられない。
目の前の人物、こと緑間真太郎は小さく息を吐き、購入していた季節限定のお汁粉に口をつけた。
「ねえミドリン」
「だからなんだと言っている」
緑間の良い所は、律儀な所だと桃井は思う。
「私、気づいちゃったんだけど」
桃井は小さくため息をつく。ここ数日、桃井を悩ませている認めるしかないが認めたくない事実を、意を決意したようにそっと口にした。
「私…、の」
「は?」
「だから、…の」
「聞こえん」
桃井は泣き出しそうな顔のまま、緑間に苦情をぶつける。
「ミドリンの馬鹿!人事尽くしてよ!」
「意味が分からんのだよっ」
「私、わたし…」
ぶわっと桃井の目に涙がたまる。
「友達がいない、って言ったのぉ!」
緑間は桃井の口にした言葉の意味が、いまいち分からなかった。
本日突然、秀徳高校にやってきた桃井は緑間の顔を見るなり子供のように泣き出し、周囲に蹴られるようにして緑間は自主練を切り上げさせられだ。前に黒子から似たような話は聞いていた上、前回一度桃井が訪問した際にも感じていたが、桃井に訪問されると、何故か当事者よりも周囲が煩い。
元々緑間自身、桃井には「女性の体操服」がラッキーアイテムに指定された時の借りがある。追い出されずとも付き合う気持ちはあったが、実際にこうして話を聞いてみるもののさっぱり要点が分からなかった。
「ううん、正しくは、女の子の友達がいないの!」
桃井がその衝撃的な事実に気がついたのはつい先日のことだった。
所謂女子に呼び出しを受け、囲まれた時のことだ。桃井は、男性からの呼び出しも多いが、女性からこの手の呼び出しも多い。
意図せずとも誰かの本命を断ったとか、媚を売っているだとか、また最近増えてきたのは昔の態度に戻りつつある青峰とのことだ。
元々、青峰はそれなりにもてる。
あの圧倒的なバスケの才能を見てしまえば、それだけである程度の女子はイチコロだ。今まではその身に纏う空気が周囲を拒絶するものだったが、試合にい負けたことで、少しずつ昔の姿を取り戻しつつある青峰は大分女子からの受けが良くなっていた。
『ただの幼馴染っていっていたよね?』
『なのに、先週もその前の週も二人で出かけていたのって何?目撃証言があるんだけと』
『私たちのこと、笑っていたわけ?』
彼女達は真剣で、桃井は慌てて真実を当然告げた。付き合ってはいないし、ただ買い物に付き合って貰っていただけだと。
自分達の関係はただの幼馴染である。
だがそれは彼女達には伝わらずそこで言われたのだ。
『そんなの女友達と行けば良いじゃない!』
そので、痺れるように桃井は気づいたのだ。
「…私、女の子の友達が居ない…」
両手で顔を覆い、桃井は再度絞り出すように呟いた。
「そうなのか?」
緑間は女子とはどういうものだったか、乏しい知識だが一応は同じクラスにも存在しているその生態を思い起こす。
「昔は、女子とつるんでいただろう」
「そりゃ話をする子はいるかど…」
桃井はそこでばっと顔を上げた。
「週末は部活があるしオフも決まるの急だし!そしたらすぐに捕まる大ちゃんがいるし!荷物持たせられるし我儘言えるし八つ当たり出来るし便利出し!」
ガングロの癖に便利なんだもんーっ、と呼ぶ桃井の言葉の意味は全く分からないながら、緑間は取り敢えず確実に分かる事実を口にした。
「それであれば、俺に相談しも意味がないだろう」
緑間は静かに、むしろ眼鏡の位置を直しながらきっぱりと告げる。
「俺は友人が居ない」
「ミドリン…」
「それで困ったことなど、一度もないのだよ」
「ミドリン…っ!」
きっぱりとしたもの言いは、相談事には明らかに向いていないとも拒絶とも聞こえるが、今はこの一言にどれだけむしろ心が救われることか。
周囲を見回して、この世界で同性の友人が居ないのは自分だけではないのかと気づいた時の絶望感。
それに桃井には分かっている。いつだって緑間の発言の裏にあるもの。
(もっと適任がいて、では人事は尽くせないってところかなぁ)
緑間の物言いは優しくはないし、淡々としている。マイペースで、自他ともに厳しい人物ではあるが、冷たい人物ではないことを桃井は知っている。
キセキのメンバーと共に居ることは、さっきにとって慣れていることであり同時に呼吸をしやすい。
個性が強い彼らが、誰一人自分を抑制することなく固まっている場所は、些細なことを気にすることもない。更に、皆がそれない威圧感のある外観をしているため、ナンパがよってこないという利点もあったのかもしれない。
桃井は、ふっと視線を下げて軽く首を振る。
「最初はね、テツくんの所に行こうとしたの」
「ほう、黒子か」
「でも、テツくん」
そこで、さっきはふっと視線を下げた。
「ーー友達、多いから」
これで自分の方が少なかったらと思うと、否ほぼ確実にそうだからこそ事実と向き合えなかった。
黒子は一人でいることを好むが、見つけられてしまえばそれなりに付き合いをする。むしろ妙に周囲が黒子を放っておかないと言った方が正しいのかもしれない。
黒子にはどこが構いたくなる雰囲気がある。
「撤回する。お前は正しい人選をしたのだよ」
「ミドリン」
「安心しろ、俺に友人などいない」
「ミドリン…!」
むしろ決め顔ともいえそうな表情で言い切った緑間に、桃井はむしろ嬉しさで泣きそうになる。
「だが、居ない俺と話をしてお前にとって何になるのだよ」
「うん、ミドルんはやっぱりミドリンだね」
「…桃井」
唸るような声まで、何もかも昔ながらの緑間だった。
「というわけで、日曜日ミドリン映画を見たくない?」
「何故そうなる!?」
「観に行きたかったんだもん」
「友人を誘え!」
「…」
「…、!」
沈黙を経て緑間が己の失言に気づき、今更はっとした顔をする。
「なんだ、…あれだ。女友達がいなくともあの馬鹿が、先ほど言っていた通り青峰がいるだろう。自分のやりたい行為が満たされるのであれば、青峰相手だろうが問題ないのだよ」
眼鏡をかちゃかちゃと弄りながら緑間が視線を逸らしつつ口にする。
「…大ちゃんはダメ」
緑間には伝えていないが、そもそものきっかけが青峰を目当ての女子達なのだ。こういう瞬間、いっそ青峰がブサメンであればよかったのにと思う。バスケの才能があっても、身長も高くなければと青峰にとっては酷い話を真剣に桃井は願う。
そんな桃井の心境を知らない緑間は一呼吸分考えた答えを口にする。
「馬鹿だからか?」
至極真面目に問い返されて、噴き出しそうになるが寸での所で堪え、取り敢えず適当に頷いておく。
「そうか。なら黄瀬は」
「きーくん仕事ばっかだし。きーくんと居たら、女の子にやっかまれて大変だもん」
「ーー、俺か」
そして緑間は頭を抱える。
「あ、ミドリンもしかして予定あった?」
問いかければ、一瞬ビクリと肩が震える。聡い桃井にはそれだけですぐに分かってしまう。
「予定というほどのものではないのだよ」
「えーでも予定なんだよね?ずるい…」
「ず、ずるくなどないの!」
(高尾くんあたりか)
はぁとため息をつくが、緑間に友人が出来たことは喜ぶべきことだと思うことにした。恐らく緑間は否定するだろうが。
それにそもそも、緑間と出かけたとしても自分に「女友達」が居ないことには変わりがないのだ。
キセキの世代の交流が復活したのは、夏頃からこの冬にかけてだった。一度ほどけしまった糸はもう戻らないかと思って何度も悲しく、胸が締め付けられるような思いをしたが、誰もが今は少しずつ良い方向に向かっている気がする。
全員がばらけ、桃井は結局青峰を見守る道を選び、それでも桃井がその次に心配していたのは緑間のことだった。
緑間はとにかく分り難い性格をしている。だからこそ、彼の周囲を心配し、少しだけ面倒なことにっ首を突っ込んでしまったことも今は良い思い出だ。
「…、しかしお前はよく女子といたろう」
「女子はねー色々あるんです」
「そうなのか」
「そうだよ」
中学の頃は、同じマネージャーに女子が複数名いた。必然的に彼女らと過ごす時間は長く、桃井は相当意識して過ごしたと思っている。
青峰の事を意図的に「青峰くん」と呼ぶようになったのも周囲との関係を考慮してだ。それでも青峰の態度が変わらないので、効果がないといえば無かったが、当時は赤司という絶対的な人物がいたこともあり、幸いにも状況が悪化することは無かった。
桃井は、味気ないアイスティーをずるずると呑む。目の前の緑間はもくもくと汁粉をすすっている。
緑間は甘味が好きだ。
普段の緑間は、ストイックと言える程食べるものを決めている。母親がカロリーを含め、栄養を完璧にコントロールした食事を作っているせいもあるが、それはそもそも緑間には味覚がないからだ。正しくは、緑間自身が「味覚」を上手く理解をしていないのだと桃井は思っている。
桃井自身はあまり思わないが、自分の手料理はいまいち他人の味覚と合わない。
(美味しいはずなんだけどなぁ)
青峰など毎回文句も言いたい放題だが、そんな中、平然と同じ様子で口にし続けてくれたのは緑間だ。もっとも見た目がちょっと焦げたりしていると盛大に眉は
その緑間が、唯一味が分かり好むものが甘味である。
「美味しい?」
「う…、私も汁粉にすればよかったかなぁ」
「食べるか」
正直に言えば食べたい。だが桃井は小さなため息を共に首を振った。
緑間たちと違い、桃井はただのマネージャーであり運動量はさほどはない。それであれば、余計なカロリー摂取は控えるにこしたことがない。
恐らく自分も緑間も、体質としては太りやすい。
「難儀だな」
「お互いなね」
「うむ」
桃井は再びため息をつきつつ、それでも今日こうして付き合ってくれた緑間に取り敢えず感謝をするべきかと考えていれば、後頭部に衝撃が走った。
「いった!」
「何してんだ、ブス」
聞きなれた声に、桃井が振り返るまでもなく隣にドサリと誰かが座る音がする。目の前に座っている緑間が僅かに眉を潜めたが、相変わらず綺麗な姿勢で黙々と汁粉を口にしている。
「え、なんで」
隣に座った人物に、桃井は心底驚いた。
「つーか、俺が部活出ていんのに堂々とお前がさぼりがよ」
「う」
隣に座ったのは、間違うはずなどない幼馴染であり、先ほどから話題にあがっていた青峰大輝その人だ。
「さぼりは駄目だよ!じゃなかったのかよ」
「うう、」
青峰のトレーには飲み物他、ポテトと包装されたバーガー二つ乗っている。包装紙の色を見なくとも、テリヤキバーガーだということは桃井にはすぐに分かる。
青峰の行動は基本本能によるものが大半だ。好みは早々変わらるものではなく、結果同じ味をひたすら食べる。新商品が出た時は試す時もあるが、結局はいつものメニューに落ち着くことを知っている。
いい香りがするすれに空腹を刺激され、取り敢えず青峰のポテトを一本だけ貰うことにする。
「…、さぼりじゃないよ」
「ほー」
「し、下見というか調査というか」
「今更こいつのか」
「い、色々あるの!」
「ほー」
青峰の声に、桃井は言葉を詰まらす。いつもであれば、桃井がぎゃんぎゃん文句を言い、受け流れすのが青峰だが今日はある意味逆のパターンだ。
青峰の指摘が正しく、桃井は早々に抵抗を諦める。だが恐らく青峰は当分このネタでからかってくるだろう。
(大ちゃん、部活早上がりしたのかな)
時計を見ると、今頃部活の撤収作業が終わる時間帯だ。一応行き先は秀徳とマネージャーには伝えいた。恐らく青峰はそれを聞き、当たりをつけてきたのだろう。青峰の本能的な勘は、いつだて外れることがない。
ウィンターカップでの初の敗戦を経て、何かが少しだけ吹っ切れた青峰は、昔のような無邪気さはなくともそれでもバスケに対して真面目に取り組むようになっている。ピリピリとしてものも無くなり、自然体に近づいたということは、引退した先輩方も口にしていた。
それは、本当に喜ばしいことで、桃井としても嬉しい。好きなバスケに夢中になれる環境をしっかりと作って上げたいと思うし、そのための努力は怠らいないつもりだが、今日の事は取り敢えず大目に見て欲しい。
(暫く、怠っていたもんなぁ)
青峰の持つ才能そして魅力は分かって居る。黄瀬ですら一発で魅入られた青峰の才能に、女子が参らないはずはない。
今回は桃井が完全に油断していたのだ。
もっと早く、中学校の時のように「青峰くん」に切り替えるべきだった。否、呼び方を戻すべきはなかったのだ。
(今だって、注目浴びているし)
傍のテーブルにいた女子高生たちが、ちらちらとこちらを振り向いているのは気のせいではないはずだ。
桃井自身、女友達が少ない理由は分かって居る。部活が忙しいなど理由が幾つかあげられたとしても、緑間に告げたように、結局いつも青峰が傍にいたことだ。
青峰とすごすことは楽で、青峰もなんだかんだ付き合ってくれるため、桃井としては非常に楽な生活だ。お互いなんせ幼稚園の頃からの知り合いで、兄妹ではないが家族のような感覚すらどこかある。
『さつき』
それこそその一言で、大抵の意志疎通が出来てしまうくらいには。
(うー、せめて高校にも女子マネがもっといればなぁ)
唯一の女子マネは3年生のみで、例年通り夏の時点で引退してしまった。後は男子マネージャーがいるのみで、見事に桐皇のバスケ部は男子所帯だ。そう言った環境になれてはいるものの、女子の友人を作る環境ではないことは断言できた。
ふとそこで桃井は気になり、青峰のポケットから携帯を取り出す。
「うお、なんだよ」
「いいのっ」
「何がだよ」
呆れたように言いつつも、取り返されないので桃井はそのまま電話帳を開く。同時その場に突っ伏せした。
「桃井?」
完全敗北という言葉が浮かぶのは何故なのか。
無言で携帯を差し出すと、緑間が小さくため息を吐く。その声は僅かに同情を含んでいるように聞こえた。
「桃井」
「ずるい!」
「はぁ?」
桃井の勢いに、若干後ろにそれつつ青峰が問い返す。
「酷いよ…、酷いよね」
「だから何がだよ」
「なんで!大ちゃんこんな登録人数いるの!?何知らないうちに人事尽くしているの!?」
もしやと思って開いた電話帳は実に登録人数は約200人。完全完璧に敗北以外の何でもない。
悲鳴をあげつつも桃井自身分かってもいる。バスケに諦めのようなものを抱く前の青峰は人付き合いもよく、すぐに誰とでも友人になっていた。ストバスなどで気の合った人物らと、乞われるまま連絡先を交換する場面も何度も見ている。
「勝手に登録されんだから知らねーよ」
その一言がグサリと桃井に突き刺さる。
「ミドリーン!」
「桃井、諦めろ」
「諦めろって言われても」
「奴は地球外生命体だ」
珍しい緑間の軽口に思わず噴き出してしまえば、そのタイミングを待っていたかのように、緑間は汁粉のカップを置き鞄に手をやる。
「じゃあな」
「え、ミドリン!?」
「そろそろ迎えが来るのだよ」
すんなりと緑間単体が捕まったと思ったが、そういうことかと桃井は小さく息を吐く。緑間が孤立せず、誤解されず受け入れられている環境は桃井にとっても喜ぶべきことだ。仕方なくお礼を言って緑間を送り出す。
そうなると残るのは青峰と桃井である。
「つーか、何の話だよ一体」
「大ちゃんには無縁な話ですー…」
ぼっち同盟とはさすがに口にできず、桃井はふてくされた顔を作る。
「今日は違うもん」
桃井と緑間には共通点が一つある。それはお互い、過去太っていたという過去だ。
桃井も昔は青峰に付き合い少しだけ運動をしていた時期もあり、その時の体型が急激にかわったが、緑間もバスケットを始めるまでは太っていたと聞いてりる。
今では、緑間の母親は徹底したカロリー及び栄養をコントロールした食事を作っている。それは桃井個人としても、またプレイヤーを支える立場としても非常に興味のあるもので、よくその手の情報交換を中学時代にはおこなっていた。
青峰には当然興味のないはなしで、毎回呆れた顔をされ、近寄れもしなかったが、青峰はそんな時は大抵いつも黒子や黄瀬とボールを追いかけて遊んでいた。
(懐かしいな)
最近頻繁に中学時代のことを思いだすのは、今の関係が改善されたきたからだろうかと桃井は思う。それが嬉しい反面、しかし同時にだからこそよけい青峰の電話帳が重くのしかかる。
このまま一人も友達らしい友達が居ないのはさすがにまずい。とにかく桃井は焦る気持ちで一杯だった。200件とまでは行かずともせめて50件はいきたいと心の中で決意する。
「おいブス」
「…ブスはいません」
「さぼり魔」
「さ、さぼってないもん!大ちゃんに言われたくないもんっ」
「へーへー」
言いながら、青峰は少しだけ笑っていた。バスケがつまらいものになってしまってからは、あまり見ることがなかった青峰の笑顔
怒っている口にポテトを一本突っ込もれる。こう一本だけと思い、桃井は結局それを咀嚼する。桃井はマジバメニューの中ではポテトが一番好きだ。昔散々からかわれたが、それも揚げたてではなく、少し放置してしんなりしたポテトが好きなのだ。
そして青峰はそれを分かって居るので、しんなりした物を桃井に寄越す。
(これくらいじゃ懐柔されないんだから)
睨みつけながら咀嚼していればもう一本、口に突っ込まれる。
とにかく暫く青峰は敵だ。いくら便利で楽ちんでも、青峰は敵なのだと睨みつける、
「…これ、念のための質問だけど」
桃井は前置きをつけてから問いかける。
「大ちゃん、日曜日予定ある?」
「寝る」
「起きたら」
「知らね。あーそん時の気分じゃね」
桃井は理解する。いつもこの言葉に騙されるのだ。
予定がないような言動をいつもする上、青峰は大抵午前中は家に居る。最近はロードワークで出ていることもあるが、突撃すれば大抵捕まる便利さがいけない。
だから桃井も青峰がいるしと結局あてにしてしまう。どこか外で待ち合わせをすることは危険だが、隣に迎えに行ってしまえば全ては解決する。
「元気だったら」
桃井は諦めず、ぐいっと質問を重ねる。
「あーバスケでもしにいくんじゃね」
「メンバーは」
「向こうついてから決めるわ。…おい、これなんの質問だよ」
じっと桃井は見逃さないように青峰を見つける。
「おい、さつき?」
(分かった)
青峰はすぐに友人も出来る。
更に適当に連絡すれば、つかまる仲間もいる。
(予定がないのは)
(…もてるものの、余裕ってことだ…)
気づいてしまい桃井はに唐突に泣きたくなる。同じ時間を過ごしているはずだという卑怯だと意味もなく八つ当たりをしたくなる。
否、ここは実際に八つ当たりをする限る。
「大ちゃんの馬鹿…」
「はぁ!?なんでだよ」
「ずるいっ」
「は?」
当然ながら青峰は全く意味が分からない。
「馬鹿ったら馬鹿!暫く青峰くんと別行動するから」
「ほー」
その軽さがまた、「俺は困らないけどな」と言われているようで、桃井は持てる力で青峰の脛を蹴りつける。
「うるさいーっ」
「いてぇ!さつきからお前一体何なんだよ。つか、気持ち悪いからその呼び方は止めろ」
「ふーんだふーんだ!」
「へいへい」
その日は結局半分喧嘩のように騒ぎながら、帰宅するため駅へと向かっていった。